hnwの日記

日付と時刻の豆知識 (1)暦と地球の運行

WEB+DB PRESSに連載中の「PHP転ばぬ先の杖」も次で5回目です。表紙にも載せて頂きましたが、次号Vol.60では「日付と時刻」をテーマに書きました。12月23日発売予定だそうですので、よろしくお願いします。


ところで、今回の原稿のために調べたものの、雑誌記事には反映できなかった内容がいくつかありました。いわばボツ原稿のようなものですね。せっかくですので、これを何回かに分けて紹介します。1回目は暦に関する話題です。


小さい頃、僕は春分の日秋分の日の日付が毎年違うのが不思議でした。今説明するとしたら、「地球の公転周期はピッタリ365日ではないため、地球は1年後の同じ日付に同じ位置にないから」ということになるでしょうか。地球の公転周期はおよそ365.24日ですから、春分秋分といった天文的な位置は同じ日付には対応せず、毎年ズレが生じます。逆に言えば、このズレを補正する仕組みがうるう年なのです。


ところで、グレゴリオ暦のうるう年のルールって少し複雑ですよね。4と100と400とで割った余りを調べるなんて普通には思いつかないようなルールです。これにはどれくらい天文学的な根拠があるものなのでしょうか。以下はグレゴリオ暦と地球の運行との関係をグラフ化したものです。



これはWikipedia英語版の「Leap year」からの引用*1で、毎年の夏至の日付をグラフ化したものです(縦軸が日付を表します)。2日ほどのブレを許しながら、400年後の同じ日に地球はそれなりに同じ位置に戻ってくることがわかります。400年に3回のうるう年のスキップを含め、よくできた仕組みです。


ここで別の暦について紹介します。イランに古くからある暦にジャラーリー暦というのがあります。これは33年に8年うるう年が入るような暦で、グレゴリオ暦より正確な暦として知られています。


この暦における上記グラフと同様のグラフをWikpedia英語版の「Iranian calendars」で見つけました。



これは33年周期になっており、非常に綺麗なグラフです。グラフを見比べるとグレゴリオ暦がやっつけ仕事に見えてしまうほどですね*2。こんな暦がおよそ1000年前に使われていたというのですから、凄い話です。


ただ、33年に8回のうるう年というのは運用コストが高すぎたのか、当時のイランでもあまり定着しなかったようです(現在では再び採用されているとか)。グレゴリオ暦は一般人にも平易でありながら天文学的にも根拠があるという意味で、いい落としどころと言えそうです。


以上、実用性がまるで無い豆知識でした。このあたりは調べていくとマニアの人がたくさんいて楽しいですね。WEB+DB PRESSの記事はもう少し実用的ですのでご安心を。


WEB+DB PRESS Vol.60

WEB+DB PRESS Vol.60

*1:CC-BY, Author: BasZoetekouw

*2:あくまでパッと見ての感想です。こちらのグラフは春分点基準だと思うので、正確さに関する比較はこの2つのグラフだけではできないと思います。念のため。